「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」

砂漠 (新潮文庫)

砂漠 (新潮文庫)

大学生5人をめぐる青春小説。いいタイミングで読んだな、と思いました。


とある大学に入学した北村、鳥井、西嶋、東堂、南という男女5人の学生は、名字に【東西南北】が付くものを集めて麻雀をしようという西嶋の妙な召集から出会うことになり、一緒に大学4年間を過ごすことになります。彼らの4年間は平穏無事に恙なくすぎ・・・なんてことはなく、様々な出来事に翻弄されながら絆を深めていきます。

****************

とても個人的なことですが、ちょうどいま大学4年生の夏休みを過ごしているわたしとしては、共感する点や、「こんな仲間がいても楽しかったかもしれない」とうらやんだ点などがたくさんあり、とても身近なものとして読めました。記事のタイトルにした「その気になれば〜」という台詞は西嶋くんという強烈なキャラクターの台詞で、作中では「砂漠」は大学の外に広がる「社会」や、片腕を失って絶望していた鳥井くんの心の比喩として使われています。実際、鳥井くんの心を開かせるのは「余裕」なんかではなくて、4人も鳥井くん自身もたくさんもがいて、たくさん無理をしました。世の中には「その気」になっても「余裕」でできてしまうことなんてとても少なくて、きっと西嶋くん自身もそれをわかっているからいつも常に何かに憤っている。そんな西嶋くんが、『学生』の中にある焦燥感を体現しているようで、非常に愛おしかったです。西嶋くんいいキャラだよなあほんとに。

****************

最近伊坂さんの作品がどんどん映画化されているからか、読みながらキャストを想像していました(笑)鳥井くんは森山未来くんのイメージです。西嶋くんが難しいなあ。