「あなたは 本当に 真面目 なんですか」

恋と罪悪 (マーブルコミックス)

恋と罪悪 (マーブルコミックス)

昨晩読み返して「この短編集好きだな〜」とじんわり思いました。
ボーイズ ラブですのでお気を付けください。


5つのお話が収録されていて、うち1つは長めで前後篇にわかれています。おまけとして表題作にまつわる短いお話も書きおろしで収録されています。表題作は、警察官として高い地位(署長)についている井上さんが高校生の頃を回想するところから始まります。井上さんは高校生のときに関係を持っていた「ふまじめな」柴田くんに応えられなかったことを悔いていて、30年後の現在は犯罪者となっていることを知りながら、別れの時に約束したあることを果たすためにある場所に行きます。有名な台詞を引用したシーンが印象的で、また、この2人にとてもマッチしていてきゅんとします。

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どの作品も舞台設定や台詞が好みなのですが、はじめて読んだときに驚いた、ということもあって「2/3の世界」という短編が印象深いです。もともと「攻め×攻め」をテーマとするアンソロジーに収録されたお話であるということに後から気付いて納得したのですが、片思いの相手を亡くした若者と、亡くなった若者が好きだった相手、を中心としたお話です。読み終わると、「2/3の世界」というタイトルがたくさんの色を帯びて見えてきます。ここに描かれているのは亡くなった小田切くんをめぐる残された2人の「2/3の世界」ですが、彼が生きていた頃は別々の「2/3の世界」があったわけで。お話は残された2人が新しい関係を結んでいく未来を思わせる形で終わってゆくのですが、それはお互いにお互いの中の小田切くんを補完していく作業のようで、やはりタイトルの意味深さを感じます。基本的にはハッピーエンドで幸せなお話が好きなのですが、お話全体に流れる何とも言えない雰囲気が好きで、何度も読み返す短編です。

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「こころ」は高校時代に読んだはずなのですが、該当の台詞をうっすらとしか覚えていませんでした。今読み返すと感想もまた違うんだろうなあ。たうみ先生は絵柄が安定していてお話も世界観がはっきりしてるな〜と思うのですが、単行本がまだ2冊しか出ていないのがとても意外です。一般作も書かれてたりするのだろうか?