明日は日曜だし

放課後の国 (フラワーコミックス)

放課後の国 (フラワーコミックス)

2か月ほど前に購入した西先生の短編集です。どの短編も大好きでなかなか感想が書けずにいました。


コミックタイトルとなっている「放課後の国」はあくまでコミックタイトル(もしくはシリーズタイトル?)で、内容はそれぞれ教科の名前を冠した短編が6篇収録されています。高校3年生の最後の席替えで好きな人同士で班作りをしたところ、特に誰とも群れずに残った生徒が集まってできた「微妙班」の6人がそれぞれの短編の主人公(もしくは主要人物)になっていて、そういった意味では短編集というよりはシリーズ連載といったほうが正しいかもしれません。この6人のキャラクターがみんな憎めなくて、残り者たち、というよりは自分の世界が確立されすぎている、という感じでしょうか。だからこそ彼らのそれぞれの「放課後」はこんなにも面白味に満ちているのだと思います。

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6篇のお話がどれも面白くてどれか一つ!というと難しいのですが、「理科の瞬き」という微妙班班長の今井くんとその友人の竹原くんのお話がとても好きです。

図書委員(?)の竹原くんは延滞図書の返却をお願いするために今井くんを追いかけ、家までついて行ってしまいます。お邪魔した今井くんの部屋で、今井くんが占星学に詳しく、星を読むことができることを知り、その話をきっかけにふたりは友達になります。しかし、じゃあ「自分と友達になったのも、星がそう告げていたからなのか?」といった質問を竹原くんが今井くんに投げかけたことで、お話は思わぬ方向へ展開します。

竹原くんは、大切な存在を大事にすることが苦手で、むしろそういった存在を持つことにもどこか臆病になって逃げてしまうのですが、今井くんは竹原くんのそんなところも見透かして一緒にいようとしているのだろうな。

ふと停電になって、マッチに手を伸ばす竹原くんの手を今井くんが握る場面があるのですが、ここでそれまでずっと筆談だった(今井くんは自身の声をからかわれたことから人と話すのが苦手なのです)今井くんの声を聞きます。停電で視覚がきかないからこそ、体温や音、そして彼らの心音までもこちらに伝わるような表現が、すごくうまいな〜と感心してしまいます。

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ひらひらひゅ〜ん」で西先生を知って購入した短編集だったのですが、ここまで「どのお話も好き!」というのは珍しいほど全部が大好きな作品たちです。「理科の瞬き」に関しては上記でだいぶネタばれしてしまったのですが、他の作品も高校生らしい甘酸っぱさに満ちていて素敵なので、たくさんの人に読んでもらいたいなあ。