「どんなに時間がかかってもいい」

もし無機物と結婚できるなら、わたしは短編集と結婚したいです。それくらい本当に短編集が大好きです。特に好きなのは一冊の中に全く違った世界観(時代物とファンタジーと恋愛もの、とか)のお話が入っていてその作家さんの大いなる可能性を感じさせてくれるような短編集なのですが、登場人物がリンクするオムニバスなどもそれらの作品群の登場人物への作者さんの愛情やこだわりが見えるようで大好きです。

スケルトン イン ザ クローゼット (フラワーコミックス)

スケルトン イン ザ クローゼット (フラワーコミックス)



表題作は優等生な兄と漫画家の弟のところにふたりの従妹の女の子が突然やってきて、3人がそれぞれ関わりあうことでお互いに気付けなかったことに気付いていくお話です。裏表紙にもありますが、恋愛モノではなく、ファミコメ(というらしい)です。

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私が1番好きなのは「僕の1番好きな歌」というお話です。表題作シリーズ以外に6篇収録されているお話のうち3篇がオムニバスというか登場人物がリンクしていて、そのうちの1篇です。岩本さんのお話に出てくる、黒ベタ塗りでない長めの髪の男の子はやさしくて周りに気を遣いすぎて大変そうな子が多いなぁとうすうす感じてはいたのですが、このお話の男の子にもそんなところがあります。この前「感情があふれる瞬間」というのが大好きだ、と書いたと思うんですが、ある意味それとは正反対なのかもしれないのですが、「気付いたら『俺なにやっちゃってんだろう』なことをやってしまっていた」というエピソードも大好きです。このお話の主人公の場合だと、それがクラスメイトのためであり、大好きなビートルズへの思いのためでもあるのがすごくかわいらしい。あとやっぱりしっかり者の女の子と優しすぎてある意味頼りない男の子とのカップルっていうのがすごく好きなのです・・・だってときめくじゃない・・・!

それにしても岩本さんの描かれる学校生活というのは身近でいてときめきにあふれていて素晴らしいなぁ。連載が2本もあって大変だとは思いますがいつかまた短編も描いてほしいです。