まじめに、ゆっくり、恋をしよう。

同級生 (EDGE COMIX)

同級生 (EDGE COMIX)

卒業生-冬- (EDGE COMIX)

卒業生-冬- (EDGE COMIX)

卒業生-春- (EDGE COMIX)

卒業生-春- (EDGE COMIX)

まじめにゆっくり恋をした二人が、「同級生」を終えるまで。


以下、ネタばれとボーイズ ラブの内容を含みます。お気をつけください。




「同級生」の巻末コメントで明日美子先生がおっしゃっているような、いろはの「い」になるような作品になったと思います。左から「同級生」「卒業生 冬」「卒業生 春」と並べると背表紙の絵が、佐条と草壁が見つめあい、一方で佐条の方を向く原先生と佐条の視線は絡み合うことはない、っていう仕組みがまたお話そのものをあらわしていてニクイです。
「同級生」では高校2年生の夏に恋が始まり2度目の夏を迎えた二人が、「卒業生」では冬、そして卒業の季節を迎えます。「冬」では草壁が浮気しているのではないか、と疑ってそこに原先生も加わって一悶着あったり、佐条の母親がガンで入院することになって心配する草壁にあたってしまう佐条がいたり、といくつかの問題にぶつかってはお互いの絆を深めていきます。「春」では関係が一歩前進したものの、お互いが離れ離れになる未来を感じたまま卒業式を迎えます。


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「絶対」なんてことはないので、結婚を誓いあった二人であっても離れるときは来るのかもしれません。でも、そうならないための術をしっている2人だとも思うので大丈夫だろうなぁと信じています。
以前、日高さんの「シグナル」というお話(つシグナル (花音コミックス))で読んだ「もっと、面倒だけど努力してください」という台詞がすごく好きで、恋愛って相手のことを好きになればなるほど気になることや気に食わないことが増えたり、話さなきゃならないことが増えたりで本当に面倒なんだけど、でもそれを億劫に思って怠ると、きっとあっという間に終わってしまうんです。というようなことを言う登場人物にすごく共感した覚えがあるのですが、草壁と佐条のお話はそんな「面倒だけど大事な作業」の繰り返しであったと思います。


ボーイズ ラブで「結婚」を扱うのってすごく難しいというか、少なくともわたしはすごく構えちゃうんですよね。作中の佐条みたいに難しく考えちゃうんです。でもこのお話の「京都にて」から「卒業」までの流れにはそんな論理武装で構えちゃってるわたしを解きほぐすだけのものがありました。離ればなれになってしまう2人にとって少しでもよすがとなるのなら、そういう関係性を結ぶことも大事なのかもしれないなぁと。

まじめに、ゆっくり、恋をする。そんな簡単そうなことが難しいのは、きっと本当に相手のことが思いやれていないからで、本当にこの先も相手と一緒にいるという覚悟がないからなんだと思います。この2人にそれができたのはその2つのことを自然と育んで大切にしてきたからです。そうやって築いたものはこれから先も彼らを支えていくのだろうと、わたしは信じたいです。


2010年は初っ端からこんな素敵な漫画を読むことが出来て、幸せなスタートが切れました。この1年も素敵な漫画に恵まれた1年になりそうです。明日美子先生、そして茜新社の皆様に素敵な漫画との出会いを感謝して、小冊子が届くまでおとなしく待とうと思います。