All Things You Want

嘘つきは紳士のはじまり (EDGE COMIX)

嘘つきは紳士のはじまり (EDGE COMIX)

下の漫画の感想がまだですが、こちらを先に。

ボーイズ ラブですのでお気をつけください。



舞台はアメリカ。表紙に登場しているポール・トーマス・ハスキンス教授とその生徒である大学生のジョナサンを中心に、教授の過去のお話などを含めた6本の短編が収録されています。(そのうち2本は前後編にわかれているので実質8本かな?)2人の関係はジョナサンの起こした問題を餌にポールが駆け引きを持ちかけることから始まります。はじめはゲイであるポールの誘いに乗るかたちで関係を結んだはずだったのに、だんだんとジョナサンの中でポールの存在が大きくなっていき、それは同時に妻子を持つポールを相手にすることへの不安をもふくらませていきます。全編を通してポールがとてもしなやかで、そしてとてもずるい。彼の魅力のおかげかドロドロにならずに展開していきますが、それでも不倫モノはNG!という方にはおすすめしかねるかなあ、という感じです。

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わたしは特にポールの過去のお話である、「All thing you want」というお話が好きです。ポールがまだ奥さんと結婚する前のお話で、お相手はおそらく大学(医学部?)の友人であるダニエル。ダニエルは病院の院長の娘と結婚することを選び、ポールとの交際を破棄したのですが、それでも思いはポールへと向けられています。ポールの方もダニエルが望めば権力者である父にはからって医師としての地位をダニエルに与えることができるのですが、ダニエルはポールには頼ろうとはしません。そんなダニエルを繋ぎとめるためなのか、繋ぎとめられないとわかっているからこそなのか「君のためだったらなんだってするのに」「君のためだったらどこへでも連れて行くよ」とささやくポールが本当に切ないし、とてもずるい。
そんなダニエルから現在のポールのもとに手紙が届き、それがこの過去の回想話のきっかけになっているのですが、綴られているダニエルの思いもまたとても切ないです。しなやかで飄々としてさえいる現在のポールが見せる涙にはぐっとくるものがありました。

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松尾先生はこれが初コミックということで!とても驚きました。何やら体調を崩されていたようですが、無事全快されましたらまた作家買いしちゃう作家さんが増えてしまうな〜と嬉しい悲鳴をあげています^^